「個人事業主はなんでも経費にできる」はウソ!判断基準を解説
この記事をご覧の方は、以下のようなお悩みをお持ちではありませんか?
- 「個人事業主はなんでも経費にできるって聞いたけど、どうなんだろう?」
- 「何か経費で何が経費じゃないのか線引きがわからない」
結論から言いますと、なんでも経費にできる訳ではなく、経費にできる判断基準がちゃんとあります。
本記事では、以下の内容を解説していきます。
- 「個人事業主はなんでも経費にできる」は嘘!判断基準とは
- 個人事業主が経費を計上するメリット・デメリット
- 個人事業主が正しく経費処理をするためのポイント
どこまでを経費として計上できるかをしっかりと理解したいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
「個人事業主はなんでも経費にできる」は嘘!判断基準とは
個人事業主だからといって、なんでも経費に出来るということはありません。
端的に言うと「仕事に関わるから経費にできる」という考えが最もポピュラーな考えでしょう。
事業に必要な物品の購入や、取引先との会食などの交際費が経費として認められます。
この章では、一般的に言われる経費になるかならないかの判断基準を解説していきます。
①事業に関係がある出費
最も一般的に言われるのは「事業に関係がある出費かどうか」です。
国税庁が公表している「やさしい必要経費の知識」では、経費とは以下の全てを満たしていることが条件と伝えています。
- (1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- (2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
例えばあなたが八百屋さんを営む個人事業主だったとしましょう。お店としては野菜は「商品」なので、市場で仕入れた野菜は経費となります。しかし「自宅で食事をする」ために購入したお肉は経費にはなりません。
そのほか、商品を購入していただいたお客様へ向けて販売するビニール袋は経費となりますが、自分が使うために購入したショッピングバックは経費となりません。あくまで「事業を営む上で必要なものであるかどうか」が判断基準となります。
②業務上の合理的な金額
例え事業の経費といえど、経費の金額が合理的であるかどうかも判断基準になります。同種の経費が一般的に発生する業界水準から大きく外れていないかや、一般的な事業の習慣に則っていることも重要です。
例えば、1,000円で仕入れたものを経費計上しようとした場合、相場としては100円で計上するのが当たり前にも関わらず1,000円で経費計上すれば、その経費の合理性が疑わしいという判断となります。
ただし、仕入れ価格が実際に1,000円である証明ができる場合、これは正しい経費として認められます。仕入れ時期や流通量によっては、仕入れ価格に大きな変動があることもおかしくはありません。申告内容の根拠となる証拠は必ず残しておきましょう。
③私的使用との明確な区別
経費に計上する際には、事業用途と私的使用とを明確に区別することが重要です。
計上した経費が事業用途であることが確実でない場合、税務当局に経費の一部を認められない可能性があります。
例えば、一人で行く出張の料金は経費に該当しますが、家族で行く旅行は事業とは全く関係ないため経費となりません。あくまで仕事なのかプライベートなのかを明確に区別することが必要です。
仮に、事業の傍でプライベートも満たすような旅行であった場合、プライベート部分を取り除いた形状をしなければなりません。取引先との会食は経費として認められますが、家族でのディナーは経費になりません。
旅費についても、事業と関連がある出張の往復渡航費は経費として認められますが、家族との渡航費は事業外となるため認められないということです。
④将来の経済的利益
経費に計上される支出は、将来において事業に経済的な利益をもたらすことが期待されるものであるべきです。
例えば、店内を改装したり、新しい技術を生み出したりなど、設備投資や技術開発に係る支出がこれに該当します。
逆に将来において全く経済的利益を出さないであろう支出については経費になりません。
例として、IT事業を営んでいるにもかかわらず、地目山林の土地を購入した場合、明確な購入使途が見つかりません。その土地で風力発電をしたり、事業用のサーバー施設を設置するなどの具体的な利用目的の証明ができない場合、経費にはならないのです。
個人事業主が経費を計上するメリット・デメリット
事業を営んでいると必ず発生する経費ですが、そもそも個人事業主が経費を計上するうえで得られるメリット・デメリットにはどんなものがあるのでしょうか。
この章では、経費を計上するメリットと、なんでも経費にした場合に起こるデメリットを解説していきます。
経費を計上するメリット
経費を計上するメリットは以下が挙げられます。
- 節税になる
- 健全な事業の運営ができる
- 事業主としての信頼性向上につながる
経費を計上することにより、事業の収益から差し引かれるため、事業の課税対象所得が減少します。これにより、実際に納める税金が少なくて済むでしょう。
また、経費の計上は、事業の健全な運営に不可欠です。
正確な帳簿を保ち、事業において必要な経費を計上することで、事業投資につながって、事業の収入状況が好転しやすくなります。健全な運営をすることで信頼性の向上にもつながるのもメリットの1つです。
信頼性が高まることで、ビジネス取引の機会や融資の取得がスムーズになる可能性があります。
経費を計上しすぎるデメリット
では、反対に経費を上げ過ぎた場合に起こるデメリットについて以下が挙げられます。
- 税務当局の調査に選定され、経費の一部が否認される
- 金融機関等からの信頼性の低下を招く
過度な経費計上は、トラブルを招きます。税務当局はその事業者の確定申告書に疑念を抱く可能性があるでしょう。税務調査の対象となった場合は罰金や追徴課税などの制裁を受ける可能性があります。
また、経費を計上しすぎると事業の利益が低下し、取引先や金融機関との関係においても信頼性低下の原因となるのです。信頼性が低下してしまうと、将来的なビジネス機会や融資の取得が難しくなる場合も考えられるでしょう。
個人事業主が正しく経費処理をするためのポイント
個人事業主が正しく経費処理をするためには、経費計上に必要なものをしっかりと活用し、かつ分かりやすくまとめることが必要です。
経費処理をするために必要なポイントをまとめました。
①必要なモノを理解する
経費を計上するためには必要になる帳簿やモノがあり、それぞれがどのような役割を果たし、どのように経費処理に役立つのか理解しておかなければなりません。
・現金出納帳
現金出納帳は日々の現金の出入りを記録する帳簿であり、キャッシュ取引のトレースや帳簿と実際の現金残高を管理するために用います。
使い方としては、日付、取引先、取引内容(収入または支出)、金額などを記録します。お金がどのように動いていったのかを誰が見てもわかりやすく記帳できる様式が望ましいです。
・出金伝票
出金伝票は事業主が自己の事業用資金を個人用途に使用する際に発行する伝票であり、事業用途と私的使用との明確な区分に必要なモノです。使い方としては、伝票の内容、金額、使用用途、発行日などを明確に記入して利用します。
出金伝票を用いることで、事業用途と私的使用を区別でき、税務上のトラブルを防ぎます。
②入出金が分かりやすいように通帳を分ける
個人事業主の場合、事業用の通帳とプライベート用の通帳が一緒になっている方もいます。
屋号を入れた通帳を作って事業用とプライベート用の通帳を分けるなどして事業での入出金を分かりやすくすることが大切です。
③税理士に相談する
個人事業主が正しく経理処理をするには、税理士に相談することも必要です。
税理士は、税務のプロであり、経費について最も詳しく知っています。
特に節税に関する事柄についても情報を持っているため、抜け目の無い税務対策が可能です。
まとめ
経費処理を正確かつ透明に行うためには、まずはどのようなものが事業に必要であるかを見極める必要があります。
また、経費計上に必要な領収書をはじめとするこれらの書類を適切に管理し、帳簿を正確に記入することで、事業運営の信頼性向上や税務上のトラブルを回避できます。
経費や節税に関してもっと知りたい場合は、税理士に相談してみましょう。