税務調査の時効は最大何年?さかのぼる年数が決まる要因を解説
この記事をご覧の方は、以下のようなお悩みをお持ちではありませんか?
- 「税務調査が来たらどうしよう」
- 「何年前までさかのぼって調査されるんだろう」
結論から言いますと、税務調査でさかのぼれる年数は「最長、法人で10年、個人で7年」です。
事業者が帳簿を残しておかなければならない年数というのは、この税務調査のさかのぼる年数と同じです。
しかし、最長でさかのぼれる年数がわかったからといって、実際に税務調査でさかのぼれる期間についてもしっかりと理解しておかないと痛い思いをするかもしれません。
本記事では、以下の内容を解説していきます。
- 税務調査の対象となる理由
- 税務調査の時効について
- 正確な帳簿管理と申告の重要性
税務調査が来たら困りそうだとお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
税務調査の対象となる理由
税務調査は、申告された内容に疑わしい内容がある場合や、過去の申告時にあった申告漏れの状況、税務署がもっている情報によって選出された場合などに調査対象とされます。
それぞれのより詳しい理由について見ていきましょう。
①申告内容が疑わしいと判断された
過去の実績状況に比べ、売上状況が上がっているのに利益が下がっている場合は調査対象になりやすくなります。
また、一部の経費が急増しているなど、不審と思われる申告が確認された場合も、調査すべきだと考えられるでしょう。
売上の減少も、事業不振による減少だと判断されれば税務調査の対象にはされづらいですが、意図的に売上を計上していないと判断されるような減少の仕方の場合、疑いの目は向けられるでしょう。
②過去に税務調査で問題があった
確定申告を毎年行っている事業者でも、毎回申告漏れがあるような場合は税務調査の対象に選ばれやすい状況にあります。
過去に税務調査が来た際に申告漏れが発覚した事業者は、前回の申告漏れが正しく処理されているか確認するために、再度、調査される可能性が高いと考えて良いでしょう。
前回の申告漏れが正しく処理されたとしても、経理の状況が改善されていなければ、また、違った申告漏れがあるかもしれないと判断されるため、繰り返し、定期的な税務調査が行われる傾向にあります。
③不正が多発している業種であった
自身の申告内容には過去を振り返っても問題がなかった場合でも、同業種に申告漏れや脱税が多い場合は税務調査の対象として判断されやすくなります。
国税庁の過去の発表では、以下の業種が特に不正が多い傾向にあります。
- 風俗業
- バー、クラブ
- 運送業
- 建築業
同業種の場合、業界全般が税務調査の対象として判断されやすいことを覚えておきましょう。
【結論】税務調査に時効はあるのか?
結果からお伝えすると「税務調査には時効がある」のです。
だからと言って、小さな不正を繰り返しても大丈夫という考えはやめておきましょう。
万が一不正が発覚した場合、不正金額以上の重加算税がのしかかることとなります。
まず、税務調査が行われる期間について覚えておきましょう。
通常の税務調査は3年前まで遡る
一般的に最初は過去3年分の税務状況を調査されます。
この中で問題が発覚しなければ調査終了となるケースが多いです。
ただし、この場合でも3年より前の申告漏れにはまだ時効が成立しません。
それは、国税通則法第七二条に以下のような条文があるからです。
第七十二条 国税の徴収を目的とする国の権利(以下この節において「国税の徴収権」という。)は、その国税の法定納期限(第七十条第三項(国税の更正、決定等の期間制限)の規定による更正若しくは賦課決定、同条第四項の規定による賦課決定、前条第一項第一号の規定による更正決定等、同項第三号の規定による更正若しくは賦課決定又は同項第四号の規定による更正決定等により納付すべきものについては、第七十条第三項若しくは前条第一項第一号若しくは第三号に規定する更正、第七十条第四項に規定する賦課決定、前条第一項第一号に規定する裁決等又は同項第四号に規定する更正決定等があつた日とし、還付請求申告書に係る還付金の額に相当する税額が過大であることにより納付すべきもの及び国税の滞納処分費については、これらにつき徴収権を行使することができる日とし、過怠税については、その納税義務の成立の日とする。次条第三項において同じ。)から五年間行使しないことによつて、時効により消滅する。 |
つまり、税務調査の時効は3年前ではなく5年以上前の申告に対して適用されるのです。
法律上は5年前までさかのぼって調査できる
国税通則法第七十条に以下のような条文があります。
第七十条 次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から五年(第二号に規定する課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があつたものに係る賦課決定(納付すべき税額を減少させるものを除く。)については、三年)を経過した日以後においては、することができない。 一 更正又は決定 その更正又は決定に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る更正については当該申告書を提出した日とし、還付請求申告書の提出がない場合にする決定又はその決定後にする更正については政令で定める日とする。) |
以上のことから、税務調査は最初は3年分を調査して、過去にも同じ申告漏れがあると判断された場合は、過去5年分をさかのぼって調査することが許されているのです。
5年前までさかのぼって調査した結果、問題がなければ調査終了となり、もし申告漏れがあれば過少申告課税を課されます。
事後対処にも問題がない場合、調査期間以前の問題は不問とされ時効が成立します。
不正が確認できた場合7年前までさかのぼって調査される
一般的には、過去5年分を調査して問題が確認されなければ、取りこぼした問題については時効として処理されます。
しかし、申告内容に明らかな不正や故意に納税義務を果たしていない事実が判明した場合、過去7年前まで調査範囲が延長されるのです。
不正や脱税は「仮装」や「隠ぺい」によるものであるため、通常の調査では発覚しにくいものであることや、より厳しい罰則を課す必要があると考えられていることから、更に時効が2年長く設定されています。
そのため、過去7年間まで調査範囲を広げ、過去の不正に対し、過少申告加算税よりも更に厳しい重加算税を課すことで今後の不正を抑止しているのです。
法人の場合、ある一定のケースにおいては、法律上は最長10年さかのぼることはできますが、個人の税務調査と同じように、実務的には、大きな問題がなければ3年、過去からの誤りがあれば5年、脱税行為があれば、7年さかのぼられることが一般的です。
税務調査の調査対象期間はどのように決まる?
税務調査の対象に選ばれた際、事業者ごとに調査対象となる期間は一般的には3年ですが、最初から5年とされる場合や調査の途中で5年になることもあり、異なります。
どのように年数を判断しているのでしょう?
①過去に脱税行為の疑いはないか
調査対象期間は一般的に3年とされています。
ただし、当局が過去に申告誤りがあるとの情報を事前に持っている場合はこの限りではありません。
最初から調査対象期間を5年と伝えられた場合は、当局に過去から脱税行為を続けていると思われている可能性が高いため、通常よりも厳しい税務調査が行われると考えてください。
②過去の申告内容に大きな誤りはないか
調査の途中で申告で大きな誤り・ミスが見つかった場合で過去4年以前にも同じ誤りがある可能性があると判断された場合は、調査期間は過去5年分になります。
③そもそも申告をしているか
確定申告をしていない事業者は、税務調査の対象となった時点で過去5年分の調査が必要と判断されます。
また、一定以上の売上があったにも関わらず確定申告を行なっていなかった場合、申告している場合と比べて、より悪質な事業者だと判断されるのです。
更に申告する必要があるとわかっていたのに意図的に申告していなかったと判断された場合、調査期間は過去7年まで拡大され、徹底的な調査が入ります。
もし7年より前に事業を営んでいた場合は、税務調査としては時効と判断されます。
税務調査に向けての準備
税務調査は「最大7年」までさかのぼって調査可能です。
そのため「多くの年数をさかのぼられないため=大きなペナルティを受けないため」に、事業者はどのような準備をしておくべきか考えましょう。
①正確な帳簿管理と申告を行う
出納状況を正しく帳簿に記載することが大切です。
全く帳簿や書類が残っていない場合は、今の売上などから過去の売上を推計されたり、同規模同業種の割合で所得が認定されて、実際よりも高額な税額を負担することとなってしまいます。
また、帳簿や書類を意図的に捨てたと判断された場合には、隠ぺい行為として重加算税が課され、税務調査の対象となった際に調査期間が7年に延びてしまうこともあるのです。
②税関連の書類を保存する
税関連の書類は「原則7年保管」が義務付けられています。
税務調査を受けた場合に、すぐに情報を開示できるためという理由以外にも、正しく保管してあれば、事業者自身で情報を管理することで改ざん資料を渡されるリスクを排除できるのです。
③税理士に相談する
個人や自社での申告は、全ての責任が自身に発生します。
特に税申告は専門性の高い内容になるため、税理士を有効的に活用しましょう。
税理士に依頼することで、申告ミスや不正発生のない事業者として税務署にも把握してもらえます。
税務調査の対象になったとしても、税理士が関与している事業者だというだけで対応がスムーズになりますよ。
まとめ
税務調査の時効は、法律的には「5年」と定められています。
しかし、不正や脱税が発覚した場合、時効期間は「7年」まで引き延ばされることを覚えておきましょう。
間違いのない税申告をご希望なら、税理士に一度相談することをおすすめします。
税関係のスペシャリストが、あなたの安全な経営の手助けになるはずです。