最大7年遡及される「重加算税」とは?適用されるケースについて徹底解説
税務調査の対象に選ばれてしまって、今何をすべきか焦ってはいませんか?
特に、周囲で重加算税を課せられてしまったような事業者を知っていると、税務調査に危機感を覚える事業者はとても多いです。
この記事をご覧の方は、以下のようなお悩みをお持ちではありませんか?
- ・「重加算税で過去7年遡って課税された話を聞いた」
- ・「自分の申告は不正行為に該当しないか」
結論から言いますと、あなたが仮装や隠ぺいといった「意図的な不正」をしていなければ重加算税を心配する必要はありません。
本記事では、以下の内容を解説していきます。
- ・重加算税とは
- ・最大7年の重加算税が課されることによるデメリット
- ・重加算税の課税を防ぐためのポイント
税務調査に選ばれてしまって、自分も7年遡って課税されるのかと心配という方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
そもそも重加算税とは?
重加算税とは、罰則を受ける理由が「うっかり」ではなく「意図的」だと判断された場合に課税される最も罰則の重い加算税です。
例えば、100万円の売上を1桁間違えて10万円で申告してしまった場合「うっかりミス」として見ることができます。しかし、金額を50万円にすることで、明らかに売上を改ざんしているように見えるものは「意図的」な犯行として認識できるということです。
他にも、同じ仕入を繰り返し行うことで経費の水増しをしているように見える場合は、実態を調査すべきだと判断されます。その結果、税務調査に選ばれるというわけです。
税務調査官も、そのような事業者に対してはある程度目星をつけて調査対象を選んでいるため、調査の結果「意図的」な仮装や隠ぺいが確認できた際に重加算税を課すことを決定します。
重加算税で7年遡及されるケース
事前通知がある税務調査の場合、基本的には過去3年の税務資料の確認から始まります。
過去に不正をして加算税を課されていたり、不正があるだろうと目星をつけられたりしている場合は過去5年の税務資料の提示を求められるでしょう。
この税務資料を調査した中に「偽りやその他の不正行為」があった場合には、調査範囲を過去7年に拡大して遡及されることとなります。
最大7年の重加算税が課されることによるデメリット
重加算税を課せられることは、その時点で納付税額が大きく膨らむため、事業運営の大きなデメリットになります。
しかし、目の前にやってくる資金難以上に、重加算税を課されるということ自体に以下のようなデメリットも含まれることを覚えておきましょう。
- 社会的信用の失墜や税務署から目をつけられる
- 支払い猶予がなく、差し押さえされるリスク
- 重加算税自体でどれくらいの追徴課税が発生するか
①社会的信用の失墜や税務署から目をつけられる
重加算税を課されたということは、一般的には「脱税をしていた」という印象が強く、不正事業者であるという認識をされてもおかしくありません。
重加算税を課せられたことが取引先に伝わってしまった場合、納税能力を持たないほどに逼迫している状況だという印象さえ与えてしまいます。
これらは社会的信用を著しく失墜させる原因になります。
時には、事業資金の借入ができなくなったり、すでにある借入の一括返済を求められたりすることもある大きな問題だということを覚えておきましょう。
そして、重加算税を課せられた事業者は、個人・法人に関係なくブラックリストとしてマークされます。その後5年以内に再度税務調査がくることも覚悟しなければなりません。
②支払い猶予がなく、差し押さえされるリスク
重加算税を含めた全ての追徴課税には、原則として分納という制度は存在しません。基本的には、全てを一括で納めることを求められます。その納付期限も、通知書到着の翌日から1ヶ月以内というとても短い期間です。
この期間を過ぎてしまう場合、資産価値のある財産を差し押さえられることになります。動産・不動産・金融資産・売掛金・給与・生命保険など、あらゆるものを差し押さえて回収されてしまうのです。
一応、生活必需品とされるものや、資産価値を見出せない物品は差し押さえの対象外となりますが、最初の差し押さえでも満額に至らない場合は、長期にわたり財産の保有ができず、都度差し押さえられてしまうのです。
③重加算税自体でどれくらいの追徴課税が発生するか
重加算税は下表の割合で課せられます。
過少申告加算税不納付加算税 | 無申告加算税 | 5年以内に 無申告加算税または重加算税を 課されている場合 |
35% | 40% | +10% 過少申告加算税・不納付加算税:45% 無申告加算税:50% |
納付額500万円だったとしましょう。
・500万円の無申告に対する重加算税は「200万円もしくは250万円」
これらが滞納している税金と合算で、通知書の到着翌日から1ヶ月以内に納付しなければならないのです。
最悪の場合の例として「毎年100万円の所得隠し(過少申告)をしていた」条件で、過去7年を遡及して重加算税が発生した場合を考えてみましょう。
所得を隠した金額
(過少申告)
過少申告に対する
重加算税率
延滞税の考え方
700万円
(年100万円)
35%(45%)
延滞金=滞納税額×延滞税率×日数 / 365日
(うるう年も365日で計算)
延滞税率は下表の通りです。
年度
納付期限翌日から1ヶ月間
2ヶ月目以降
2000年(平成12)〜
年4.5%
年14.6%
2002年(平成14)〜
年4.1%
年14.6%
2007年(平成19)〜
年4.4%
年14.6%
2008年(平成20)〜
年4.7%
年14.6%
2009年(平成21)〜
年4.5%
年14.6%
2010年(平成22)〜
年4.3%
年14.6%
2014年(平成26)〜
年2.9%
年9.2%
2015年(平成27)〜
年2.8%
年9.1%
2017年(平成29)〜
年2.7%
年9.0%
2018年(平成30)〜
年2.6%
年8.9%
2019年(平成31)〜
年2.6%
年8.9%
2021年(令和3年)〜
年2.5%
年8.8%
2022年(令和4年)〜
年2.4%
年8.7%
(引用:国税庁 延滞税の割合)
未払金は700万円ですので、これに対する重加算税は単純計算で245万円になります。正し、過去7年に及び意図的に所得隠しをしていることから、重加算税は35%ではなく45%で考えられるでしょう。
その場合、過去7年間を一律で計算した場合の重加算税は315万円となります。
さらに延滞税は、毎年の100万円に対してそれぞれ別計算で課税されるため、365〜2556日分の延滞税が発生します。また、50万円と50万円を超える部分に対し別々の税率で計算されます。
下表は年ごとの詳細な延滞税となります。
7年前(2555日)→1,613,600円
6年前(2190日)→1,523,600円
5年前(1825日)→1,434,600円
4年前(1460日)→1,345,600円
3年前(1095日)→1,256,400円
2年前(730日)→1,168,400円
1年前(365日)→1,081,600円
この総額が約942万円となり、さらに700万円の滞納に重加算税315万円もあるため、総額2,000万円近い金額を一括で納付することとなるのです。
重加算税の課税を防ぐためのポイント
前項で最悪の場合に対する具体例を挙げましたが、そもそも重加算税を課せられないように気をつけていれば、心配する必要はないのです。
では、どのように気をつけていれば重加算税の課税を防ぐことができるのでしょうか。
①そもそも不正をしない
日頃から売上を隠ぺいしたり、経費を水増したりするような事務作業をしていれば、当然税務調査の対象となり、最悪の場合には重加算税を課せられることも仕方がありません。
反対に、税務調査が来た場合でも、不正のない事務処理をしていれば罰則を受けるようなことはないのです。
誰しもミスはありますが、できる限り間違いのない記帳を心がけることが重加算税を回避する最善の方法になります。
②税務調査での誘導尋問に正しく受け答えする
実際に税務調査が来た際、税務調査官から「この資料では意図的に隠ぺいや仮装したと思われても仕方がないだろう?」というような誘導尋問をされることがあります。その際「そうですね」などと流れで受け答えをして言質を取られてしまうと大変です。
この時点で「意図的」な不正を認めたと判断されてしまい、重加算税を課せられるということは十分にあるのです。仮に誘導尋問をされたとしても、はっきりと意図的ではないことを意思表示しなければなりません。
忘れてはいけないのが、事業者が何かを証明するわけではないことです。「意図的に仮装や隠ぺいがあった」ことを証明するのは税務調査官で、事業者は指示された資料を提示したり、質問に答えるだけで良いのです。
③税理士に相談する
不正のない会計処理や帳簿管理、税務調査での間違いのない受け答えなど、税理士なら全てを適切に完了してくれます。
また、事業がうまくいくように様々なアドバイスをしてくれるサービスを同時に受けることができるのも、税理士に相談するメリットです。
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まとめ
重加算税は、うっかりミスで発生するわけではありません。あくまでも「意図的」な仮装や隠ぺいが発覚して初めて課せられるペナルティです。正しい税務処理を心がけることで、回避できるものだということを忘れないでください。
そして、どんな税務の要件でも対応してくれるのが税理士です。重加算税を課される可能性を無くすためにも、税理士に相談することをおすすめします。
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