追徴課税が払えないとどうなる?罰則から対策方法まで解説
正しく確定申告ができていれば心配ありませんが、中にはちょっとしたミスで追徴課税が発生してしまうこともあります。年間売上高によっては、追徴課税額が驚くような金額になることもあるでしょう。
この記事をご覧の方は、以下のようなお悩みをお持ちではありませんか?
- 「追徴課税が支払えない」
- 「今すぐにお金を用意できない」
結論から言いますと、追徴課税は支払わなければならず、今支払えない場合は納税猶予制度を利用することも可能です。
支払い義務から逃れることはできませんが、少し時間の猶予があれば対応できるという場合には、用意されている制度を有効活用しましょう。
本記事では、以下の内容を解説していきます。
- 税務調査時の「追徴課税」とは
- 追徴課税の支払い時の注意点
- 追徴課税が支払えない場合
追徴課税が支払えなかった場合の罰則等が知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
税務調査時の「追徴課税」とは
税務調査時に追徴課税が発生する理由は、申告内容に不備があるからです。
それも「過少申告」と呼ばれる、申告した税額が不足しているために追加で納税しなければならない状況を指します。
本来納税すべき金額よりも少なく申告してしまった場合、追徴される本税額に加えて行政的な制裁として加算税が発生するのです。
加算税の種類
加算税にはいくつかの種類が存在します。
種類 | 概要 | 税率(課税割合) |
過少申告加算税 | 期限内に申告・納税したが本来の納税額を納めていない場合に発生する | 0〜25% |
無申告加算税 | 期限内に申告・納税しなかった場合に発生する | 5〜50% |
不納付加算税 | 源泉徴収をした法人や個人事業主が期限内に納付しなかった場合に発生する | 5%または10% |
重加算税 | 確定申告の際意図的に申告内容を偽ることで発生する | 35〜50% |
①過少申告加算税
納税額や申告額が過小だった場合に発生する追徴課税が「過少申告加算税」です。
修正申告のタイミングによって課税割合にも種類があるため、下表でご確認ください。
修正申告のタイミング | 追加税額50万円未満 | 追加税額50万円以上 |
税務調査の事前通知前 | 課税なし | 課税なし |
事前通知後から税務調査まで | 5% | 10% |
税務調査後 | 10% | 15% |
※①帳簿の提示等をしなかった場合、または、帳簿への売上⾦額の記載等が、本来記載等をすべき⾦額の2分の1未満だった場合は、10%加重されます。
※②帳簿への売上⾦額の記載等が、本来記載等をすべき⾦額の3分の2未満だった場合は、5%加重されます。
確定申告後に申告ミスを発見し、税務調査の対象にされる前に修正申告できれば、納税額は本来の金額になります。
しかし、税務調査の対象となり事前通知を受け取った後の修正申告には追徴課税が発生します。
確定申告後、申告漏れとして差し戻しを受けることでミスに気付くことはありますが、申告後に自ら再度確認することはあまりありません。そのため、事前通知前に修正申告できるケースばかりではないので注意しましょう。
②無申告加算税
申告が間に合わなかった原因の有無に関わらず、期限内に確定申告できなかった場合に発生するのが「無申告加算税」です。こちらも修正申告のタイミングで課税割合が変わります。
期限後申告のタイミング | 追加税額50万円未満 | 追加税額50万円以上300万円未満 | 追加税額300万円以上 |
税務調査の事前通知前 | 5% | 5% | 5% |
事前通知後から税務調査まで | 10% | 15% | 25% |
税務調査後 | 15% | 20% | 30% |
※①帳簿の提示等をしなかった場合、または、帳簿への売上⾦額の記載等が、本来記載等をすべき⾦額の2分の1未満だった場合は、10%加重されます。
※②帳簿への売上⾦額の記載等が、本来記載等をすべき⾦額の3分の2未満だった場合は、5%加重されます。
※③過去5年間のうちに無申告加算税を課されていた場合は、10%加重されます。
近年、特に無申告の場合の加算税が厳罰化されており、無申告を繰り返して、調査の際に帳簿の提示をしなかった場合などは、追徴税額が300万円を超える部分は、なんと50%の無申告加算税が課されることになります。
③不納付加算税
源泉徴収をしている法人または個人事業主が、期限内に正しく納税しなかった場合に発生する追徴課税が「不納付加算税」です。
源泉所得税を預かっている事業者は、たとえ1日でも納付が遅れた場合には不納付加算税が課されることとなっています。
先述した過少申告加算税や無申告加算税とは異なり、不納付加算税は明確に課税割合が決まっています。
修正申告のタイミング | 税率(課税割合) |
税務調査の事前通知前 | 5% |
事前通知以降 | 10% |
源泉徴収によって納税義務を果たしている納税者に不利益が生じるため、源泉徴収を行なっている事業者の不手際によって発生する不納付加算税は、猶予なく追徴課税の対象となっています。
ただし、納付が期限に遅れた場合でも、期限から1か月以内に納付して、過去1年間、期限内に納付できていれば、その不納付加算税は免除されますので、うっかり源泉所得税の納付を忘れたときは、すぐに納付するようにしましょう。
④重加算税
重加算税は最も重い追徴課税です。
項目 | 割合 |
過少申告、不納付加算税に代えた重加算税 | 35% |
無申告加算税に代えた重加算税 | 40% |
※過去5年間のうちに重加算税を課されていた場合は、10%加重されます。
対象となるそれぞれの加算税を課された上、規定の課税割合を追加課税されます。
重加算税は「仮装・隠ぺい行為」つまり「意図的に不正を行なった」場合に課せられるもので、うっかりミスした場合に適用される追徴課税ではありません。
- バレないように
- 上手く誤魔化して
などの考えの上で過少申告や期限を過ぎるなどの税逃れをすること自体が「意図的」なので、上手くバレないように誤魔化せていると思っても、税務調査が入り、不正が発覚した場合、過去にさかのぼって絶望的な追徴税額と重加算税を課せられることになります。
むしろ5〜7年もの期間、税務調査に怯えなければならないため、正しく申告した方が精神的にも安定した状態で事業に取り組めます。
追徴課税の支払い時の注意点
追徴課税を課せられた場合、事業者は以下のポイントに気を付けて支払いを完了するように心がけましょう。
①早期に納付する
追徴課税が課せられた場合、早い時期に納付するようにしましょう。追徴課税を「無視・放置」してしまうと、財産を差し押さえられてしまうのです。
現金資産がなければ売掛金や換価できる資産を差し押さえることも許されているため、最悪の場合「動産・不動産・有価証券など」の財産が押収されてしまうことになります。
②追徴課税は一括支払いする
追徴課税に分割支払いの制度は適用されません。
通常の納税に対しては分割制度が存在しますが、すでに支払期限を過ぎてしまった上で課されているペナルティであるため、追徴課税は一括支払いが原則となります。
③税理士による関与を受ける
追徴課税の納税で、さらに不正が発生してしまうと、絶望的な金額となり、今後の事業は行えなくなる可能性があります。
そのため、当初から正しく申告・納税するためにも税理士に関与してもらうようにしましょう。
追徴課税が支払えない場合
現金資産が手元にないために追徴課税の支払いができない場合、換価できる資産を差し押さえられることになります。
- 売掛金や入金前のクレジットカード売上
- 自動車や資産価値の高い家財などの「動産」
- 土地や家屋などの「不動産」
- 株や債券などの「有価証券」
- 暗号資産
など、これら全てが差し押さえの対象です。
この差し押さえが発生する以前に、他名義の口座への資金隠しを行なった場合でも、税務調査官は資金の動きを確認した上で本人のものであると判断されれば、他人名義の口座も差し押さえの対象にできます。
追徴課税を避けるべく、速やかに期限後申告や修正申告を行おう
申告内容の不備は、税務調査が行われる前に修正申告を行うことで追徴課税を免れます。無申告や源泉徴収の未納だった場合も、早い時期での期限後申告が追徴課税を最小に抑えることにつながり、大きな代償を支払わずに済むでしょう。
追徴課税は、確定申告を正しく行えなかったため「納税不足」が発生したことに対するペナルティです。つまり、正しい納税さえ行えれば追徴課税を心配する必要がなくなるのです。
追徴課税の心配だけでなく、税務調査の対象にも選ばれづらくなるというメリットもあるため、税理士を身近なものにしておくことが健全な事業運営につながります。
まとめ
税務調査の対象に選ばれないためにも、確定申告は不正のない状態で進められるのが理想的です。
事業者自身で行うこともできますが、会社規模が大きくなればミスの発生リスクも大きくなってしまうため、税務の専門家である税理士を有効的に活用することをおすすめします。
正しい申告は追徴課税を発生させないための絶対条件です。もし追徴課税を課せられてしまって支払えないという状況になった場合、事業運営に大きなリスクを背負うこととなります。
事業に理解を深めてもらいながら、最良の運営に導いてくれる税理士を味方につけてみませんか。