税務調査時の守秘義務とは?納税者の情報はどこまで守られるのか
この記事をご覧の方は、以下のようなお悩みをお持ちではありませんか?
- 「税務調査に守秘義務はある?」
- 「守秘義務はどこからどこまでに適用される?」
結論から言いますと、税務調査に関わる情報は税理士にも税務調査官にも守秘義務が課されます。
本記事では、以下の内容を解説していきます。
- 税務調査の守秘義務とは
- 反面調査でも守秘義務はある?
- 守秘義務を踏まえた税務調査上のポイントとは
税務調査後に自社の情報が漏洩するのではないか心配だという方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
税務調査の守秘義務とは
税務調査で明らかになった納税者の事業内容や情報、そこで発覚した事実などは「守秘義務」によって守られます。
そして、守秘義務を課されるのは「税務調査官」と「税理士」だということを覚えておきましょう。
「税務調査官」と「税理士」が、それぞれに課される守秘義務について考えていきます。
税務調査官に課される守秘義務
税務調査官に課される守秘義務は、納税者が勝手に主張しているものではなく、「国家公務員法」と「国税通則法」によって定められた「絶対の義務」なのです。
そのため、税務調査官が勝手に情報を開示したり、情報漏洩したりすると、それぞれの法律で定められた罰則が発生します。
- 国家公務員法第100条(秘密を守る義務)
- 国家公務員法第109条(罰則)
- 国税通則法第127条
それぞれの内容についてご紹介します。
①国家公務員法第100条(秘密を守る義務)
(秘密を守る義務) 第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。 ② 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長(退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職の所轄庁の長)の許可を要する。 ③ 前項の許可は、法律又は政令の定める条件及び手続に係る場合を除いては、これを拒むことができない。 ④ 前三項の規定は、人事院で扱われる調査又は審理の際人事院から求められる情報に関しては、これを適用しない。何人も、人事院の権限によつて行われる調査又は審理に際して、秘密の又は公表を制限された情報を陳述し又は証言することを人事院から求められた場合には、何人からも許可を受ける必要がない。人事院が正式に要求した情報について、人事院に対して、陳述及び証言を行わなかつた者は、この法律の罰則の適用を受けなければならない。 ⑤ 前項の規定は、第十八条の四の規定により権限の委任を受けた再就職等監視委員会が行う調査について準用する。この場合において、同項中「人事院」とあるのは「再就職等監視委員会」と、「調査又は審理」とあるのは「調査」と読み替えるものとする。 |
この法律が、税務調査官に課せられる「守秘義務」の根拠です。
税務調査官は国家公務員であるため、多くのことが国家公務員法によって規定されています。
現職としての服務中だけではなく、退職後も守秘義務を負っているので、情報漏洩の心配はありません。
仮に、納税者の脱税等によって情報の開示が必要な場合でも、所轄庁の長が許可しない限り開示することはできません。
この場合、国税庁長官による許可が必要だということです。
例外として、人事院による調査や審理の際には、誰の許可も得る必要がなくなります。
人事院は、国家公務員の採用や給与制度などを司る機関で、公務員の待遇改善や労働条件の整備、公務員の研修・教育なども担当しています。
一般的な税務調査に関係することはありませんが、人事院が絡んだ場合には守秘義務が撤廃されるということだけは覚えておきましょう。
②国家公務員法第109条(罰則)
第百九条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 一 第七条第三項の規定に違反して任命を受諾した者 二 第八条第三項の規定に違反して故意に人事官を罷免しなかつた閣員 三 人事官の欠員を生じた後六十日以内に人事官を任命しなかつた閣員(此の期間内に両議院の同意を経なかつた場合には此の限りでない。) 四 第十五条の規定に違反して官職を兼ねた者 五 第十六条第二項の規定に違反して故意に人事院規則及びその改廃を官報に掲載することを怠つた者 六 第十九条の規定に違反して故意に人事記録の作成、保管又は改訂をしなかつた者 七 第二十条の規定に違反して故意に報告しなかつた者 八 第二十七条の規定に違反して差別をした者 九 第四十七条第三項の規定に違反して採用試験の公告を怠り又はこれを抑止した職員 十 第八十三条第一項の規定に違反して停職を命じた者 十一 第九十二条の規定によつてなされる人事院の判定、処置又は指示に故意に従わなかつた者 十二 第百条第一項若しくは第二項又は第百六条の十二第一項の規定に違反して秘密を漏らした者 十三 第百三条の規定に違反して営利企業の地位についた者 十四 離職後二年を経過するまでの間に、離職前五年間に在職していた局等組織に属する役職員又はこれに類する者として政令で定めるものに対し、契約等事務であつて離職前五年間の職務に属するものに関し、職務上不正な行為をするように、又は相当の行為をしないように要求し、又は依頼した再就職者 十五 国家行政組織法第二十一条第一項に規定する部長若しくは課長の職又はこれらに準ずる職であつて政令で定めるものに離職した日の五年前の日より前に就いていた者であつて、離職後二年を経過するまでの間に、当該職に就いていた時に在職していた局等組織に属する役職員又はこれに類する者として政令で定めるものに対し、契約等事務であつて離職した日の五年前の日より前の職務(当該職に就いていたときの職務に限る。)に属するものに関し、職務上不正な行為をするように、又は相当の行為をしないように要求し、又は依頼した再就職者 十六 国家行政組織法第六条に規定する長官、同法第十八条第一項に規定する事務次官、同法第二十一条第一項に規定する事務局長若しくは局長の職又はこれらに準ずる職であつて政令で定めるものに就いていた者であつて、離職後二年を経過するまでの間に、局長等としての在職機関に属する役職員又はこれに類する者として政令で定めるものに対し、契約等事務であつて局長等としての在職機関の所掌に属するものに関し、職務上不正な行為をするように、又は相当の行為をしないように要求し、又は依頼した再就職者 十七 在職していた府省その他の政令で定める国の機関、行政執行法人若しくは都道府県警察(以下この号において「行政機関等」という。)に属する役職員又はこれに類する者として政令で定めるものに対し、国、行政執行法人若しくは都道府県と営利企業等(再就職者が現にその地位に就いているものに限る。)若しくはその子法人との間の契約であつて当該行政機関等においてその締結について自らが決定したもの又は当該行政機関等による当該営利企業等若しくはその子法人に対する行政手続法第二条第二号に規定する処分であつて自らが決定したものに関し、職務上不正な行為をするように、又は相当の行為をしないように要求し、又は依頼した再就職者 十八 第十四号から前号までに掲げる再就職者から要求又は依頼(独立行政法人通則法第五十四条第一項において準用する第十四号から前号までに掲げる要求又は依頼を含む。)を受けた職員であつて、当該要求又は依頼を受けたことを理由として、職務上不正な行為をし、又は相当の行為をしなかつた者 |
(引用:国家公務員法 第四章 罰則 第百九条)
国家公務員法第109条では、守秘義務を破った国家公務員に対し「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」を課すことが明記されています。
他にも17項目の罰則対象がありますが、守秘義務に関わるのは国家公務員法第100条です。
③国税通則法第127条
第百二十七条 国税に関する調査(不服申立てに係る事件の審理のための調査及び第百三十一条第一項(質問、検査又は領置等)に規定する犯則事件の調査を含む。)若しくは外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律(昭和三十七年法律第百四十四号)若しくは租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の規定に基づいて行う情報の提供のための調査に関する事務又は国税の徴収若しくは同法の規定に基づいて行う相手国等の租税の徴収に関する事務に従事している者又は従事していた者が、これらの事務に関して知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用したときは、これを二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 |
(引用:国税通則法 第十章 罰則 第百二十七条)
国家公務員法だけではなく、税金にかかわる法律として「国税通則法」でも、税務調査官が情報漏洩や登用をした場合に罰則を課しています。
こちらでは国家公務員法の倍となる「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」を課しています。
税理士に課される守秘義務
税理士に守秘義務を課しているのは「税理士法」です。また、同法内で罰則も定められています。
- 税理士法第38条
- 税理士法第54条
- 税理士法第59条
それぞれをご紹介します。
①税理士法第38条及び第54条
秘密を守る義務) 第三十八条 税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後においても、また同様とする。 |
(引用:税理士法 第四章 税理士の権利及び義務 第38条 秘密を守る義務)
(税理士の使用人等の秘密を守る義務) 第五十四条 税理士又は税理士法人の使用人その他の従業者は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない。税理士又は税理士法人の使用人その他の従業者でなくなつた後においても、また同様とする。 |
(引用:税理士法 第七章 雑則 第五十四条 税理士の使用人等の秘密を守る義務)
税理士法第38条が、税理士が守秘義務を負っている根拠です。
また、第54条は税理士だけではなく、アシスタントや従業員も税理士同様に守秘義務を負っていることを示しています。
ここには罰則が明記されていませんが、第59条に罰則が記載されています。
②税理士法第59条
第五十九条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 一 税理士となる資格を有しない者が、日本税理士会連合会に対し、その資格につき虚偽の申請をして税理士名簿に登録させたとき。 二 第三十七条の二(第四十八条の十六において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。 三 第三十八条(第五十条第二項において準用する場合を含む。)又は第五十四条の規定に違反したとき。 四 第五十二条の規定に違反したとき。 2 前項第三号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 |
(引用:税理士法 第八章 罰則 第五九条)
税理士法第59条第3号に明記されている通り、税理士及びその従業員は守秘義務を破った場合に「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」が課せられています。
そして、2項にある内容は、第59条は「親告罪」であることを表しています。
税理士法第59条が親告罪になっている理由は、税理士が事業内容の全容を把握しているため、告訴をすることで納税者に不利益が発生する可能性があるからです。
反面調査でも守秘義務はある?
税務調査官が反面調査を行う場合にも、当然守秘義務は発生しています。
公務員法第100条と国税通則法第127条がその根拠です。
調査中に調査対象の情報を漏らしてしまえば、例外なく守秘義務違反になります。
守秘義務を踏まえた税務調査上のポイント
税務調査で守秘義務が発生するのは、納税者ではなく「税務調査官」や「税理士」です。
そのため、以下にあげることをしっかりと理解した上で、早急に調査を完了してもらうことをおすすめします。
- 税務調査には協力的に応じる
- 必要な時には反論をする
- 税理士のサポートを受ける
それぞれを簡単に解説します。
①税務調査には協力的に応じる
税務調査にきているのは、国税局ではなく税務署からの調査官です。
つまり、脱税の証拠を見つけにきているのではなく、税務申告の内容が正しいかをチェックしにきているだけなのです。
そのため、調査に対し協力的な姿勢でいれば、通常は大きなトラブルもなく完了します。
反抗的な態度を取るよりも、指示された資料を適切に提示して、質問に対して真摯に受け答えすることが重要です。
反抗するほど、調査官が疑わなければならない材料が増えてしまいます。
税務調査をサクッと終わらせるには、堂々としていることが大切です。
②必要な時には反論をする
税務調査では、根拠のない調査をすることは許されていません。
そのため、資料提示を求められた理由が「なんとなく」というような曖昧な場合は、納税者側に提示義務はなくなります。
むしろ、調査を意図的に引き延ばしている行為になるので、不当調査に該当します。
資料提示に明確な理由がある場合の拒否は、納税者に対し罰則が発生しますが、根拠のない調査を行えば「納税者と調査官の関係性悪化」となるのもおかしくありません。
反論すべき時も感情的にはならず、要求に明確な理由があれば応じることを伝えた上で、不当な要求には応じられないことを伝えましょう。
③税理士のサポートを受ける
税務調査では、日常業務とは違うことをしなければならないので、余計な心労がかかります。
業務の進行にも悪影響が出るのは仕方がありません。
もしこのような状況を回避したいのであれば、税理士に税務調査の対応を任せることも考えましょう。
顧問契約をしていなくても、スポット契約で税務調査の対応をしてもらえます。
ただし、税務調査の事前通知を受けたらすぐに依頼するのが重要です。
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まとめ
税務調査官や税理士には、それぞれに適用される法律によって「守秘義務」が課せられています。
そのため、情報開示を怖がる必要はありません。
適切な税務申告ができていれば、税務調査を実施されても、納税者が協力的に行動することで早く終わることもあります。
もし今後、税務調査に選ばれても心配したくないと思うのであれば、税務関係を専門家に任せることをおすすめします。
税理士が適切に対処してくれるので、一度相談してみてください。