税務調査の日程は延期できる?具体的な事例を解説
この記事をご覧の方は、以下のようなお悩みをお持ちではありませんか?
- 「税務調査の事前通知で指定された実施日の都合が悪い」
- 「一度了承したものの後から都合が悪くなってしまった」
結論から言いますと、税務調査は日程変更できるので安心してください。
ただし、延期する明確な理由や事情がある場合に限ります。
本記事では、以下の内容を解説していきます。
- 税務調査は延期できるのか
- どうやって延期すれば良いのか
- 延期する上で注意点はあるか
税務調査実施日に予定が重なってしまった時の対応が知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
税務調査の日程は延期できる?
結論からお伝えすると、税務調査の日程は延期できます。ただし、誰からも延期に足ると判断できる理由や事情がある場合に限ります。
税務調査には受忍義務があり、拒否すれば「国税通則法 第128条 罰則」に基づき以下の内容の罰則を課せられるのです。
第百二十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 一 第二十三条第三項(更正の請求)に規定する更正請求書に偽りの記載をして税務署長に提出した者 二 第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)若しくは第七十四条の四から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者 三 第七十四条の二から第七十四条の六まで又は第七十四条の七の二(特定事業者等への報告の求め)の規定による物件の提示若しくは提出又は報告の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出し、若しくは偽りの報告をした者 |
(引用:国税通則法 第十章 罰則 第128条)
しかし、同法内第74条の9第2項には以下のようにも定められているため、日程の変更は許されています。
(納税義務者に対する調査の事前通知等) 2 税務署長等は、前項の規定による通知を受けた納税義務者から合理的な理由を付して同項第一号又は第二号に掲げる事項について変更するよう求めがあつた場合には、当該事項について協議するよう努めるものとする。 |
(引用:国税通則法 第七章の二 国税調査 第74条の9 第2項)
ここで触れている「同項第一号又は第二号」とは、第74条の9第1項に掲げられている以下の事項の一と二です。
一 質問検査等を行う実地の調査(以下この条において単に「調査」という。)を開始する日時 二 調査を行う場所 三 調査の目的 四 調査の対象となる税目 五 調査の対象となる期間 六 調査の対象となる帳簿書類その他の物件 七 その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項 |
以上のことから「調査日時」「場所」の変更ができます。
税務調査で日程を延期できる具体的なケース
税務調査の日程を延期するには、合理的で具体的な理由が必要です。
- 営業に支障をきたす
- 繁忙期につき立ち会いできない
- 重要な商談が入っている
- 健康上の理由
- 指定日に経営者が不在
- 税理士の都合が合わない
これらは、受け取る側との解釈のズレに関係なく、延期する正当な理由として判断されます。日程の都合がつかない場合は、心配せずに相談してみましょう。
①営業に支障をきたす
税務調査は、原則として営業時間内に行われます。
そのため、接客業・飲食業のように、営業時間中の頻繁な来客があるような事業の場合、営業を妨害する状態で調査を受けなければなりません。
これでは稼働率も悪くなるため、正当な延期理由として判断できます。
しかし、中には「それでも構わない」という調査官もいるため、まともな営業に差し支える旨を強く主張しなければならない場合もあるでしょう。
実施日程を調整することは、法令上でも事業者に許されている権利なので、泣き寝入りする必要はありません。
②繁忙期につき立ち会いできない
事業内容的に、調査指定日前後が繁忙期だとわかっている状態であれば、別の時期に延期してもらうことは許されています。
- 入学時期の学用品店
- 七五三時期の写真店
- クリスマス時期の洋菓子店 など
年中行事として馴染んでいるにも関わらず、その時期に合わせて税務調査をするということは、明らかな営業妨害です。
常に来客があるわけではありませんが、その時期を逃せば年度内の売上に大打撃を与えるため、延期の正当理由として主張できます。
③重要な商談が入っている
税務調査の事前通知が入るのは、一般的に調査実施予定日の2〜3週間前ということが多いです。
そのため、事前に予定が入っているという状況があってもおかしくありません。
ある程度融通が利く予定であれば、予定をずらして対応してしまうというのもアリです。
しかし、大きな商談のように「この機会を逃すわけにはいかない」場合は、調査実施日をズラしてもらい、事業運営を優先するのは事業者として当然の権利といえるでしょう。
④健康上の理由
命に関わるような重篤な状況で、税務調査を強行するようなことはありません。
または、入院していない場合でも、安静な療養が必要な状況であれば、調査実施日の日程を延期することができます。
新型コロナウイルスや流行性インフルエンザに感染した場合は、延期理由として扱われるので、無理に対応する必要はありません。
⑤指定日に経営者が不在
経営者が長期出張で、指定日に不在という場合も延期できます。
ただし、事業に関係した出張でなければならず、個人的な旅行などの場合は対応するように指示されます。
事業に関連した出張の場合も、今後の業績に関わるような状況でなければなりません。
⑥税理士の都合が合わない
顧問税理士との契約をしていなくても、税務調査にはスポット契約で税理士に同席して欲しいと考える事業者は少なくありません。
その際、事業者側の都合は問題なかったとしても、税理士側の都合が合わないということで日程調整するということも可能です。
税務調査で交わされる質問に対し、適切に答える自信がない場合や、税務資料に不安があるという場合には、税理士からのアドバイスをもらうのは有効な解決方法です。
税務内容を見直してもらうことで、落ち着いて税務調査に臨むことができるでしょう。
税務調査に備えるためにすべきこと
税務調査の対象に選ばれた場合、延期はできますが、拒否することは許されません。
本来であれば、ミスのない税務申告をしていれば不安になる必要はありませんが、いざ税務調査に直面して「不安になる」というのは不思議なことではないのです。
ちょっとしたミスがあれば、税務調査官は容赦無く質問し、申告内容の正当性を追求してきます。
そんな場面になっても適切に対処するには、以下の内容をしっかりと準備しておくことが有効です。
- 帳簿や領収書の整理をする
- 事前にできる修正申告は済ませておく
- 税理士に立ち会いを依頼する
これらをしっかりと理解しておきましょう。
①帳簿や領収書の整理をする
税務調査では、過去7年まで遡って調査することができます。
そのため、最悪の場合を想定して「過去7年分の税務資料を整理する」という膨大な作業が必要になります。
ここで紛失しているものがあった場合、申告内容の正当性を証明できないと「修正申告」の対象として判断されてしまう可能性があります。
納税額に変化が出てしまうので、できる限り正しく資料を管理することをおすすめします。
この膨大な作業ですが、税理士に丸投げすることができるので、スポット契約すれば事業者自ら対応しないでも済むことを覚えておきましょう。
②事前にできる修正申告は済ませておく
もし、資料整理の時点で申告ミスが発覚した場合は、調査実施日よりも前に修正申告することをおすすめします。
なぜなら、追徴課税の税率が少なく済むからです。
税理士と契約することで、この処理をスムーズに対処してもらえることを覚えておいてください。
調査実施日までに対処すれば、追徴課税が発生しないという場合も出てきます。
調査実施後に修正申告した場合、必ず追徴課税が発生することを覚えておきましょう。
③税理士に立ち会いを依頼する
税務調査では、調査官が疑問を抱いた点や不審に感じた点に対し、多くの質問を投げかけられます。
これらに適切な回答をしなければならず、曖昧な返答や適当に受け流すようなことがあると、最悪の場合「不当申告」として処理されてしまう場合があるのです。
正しく申告していた場合でも、正当性を証明できなければ不正扱いになるのは不服だと感じるのであれば、正しく対処できる税理士に立ち会いを求めることをおすすめします。
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まとめ
税務調査は「正当な理由があれば延期できる」ことを覚えておきましょう。
事前通知を受けた時点で都合が合わないことがわかっていれば、その時に日程調整をしてもらうことができます。
もし、後日都合が合わなくなってしまった場合、できるだけ速やかな相談が必要になります。
身内の不幸や体調不良は、予期できるものではありません。
もし当日に都合が悪くなったという場合も、適切に報告することが重要です。
このような場面でも、税理士に依頼しておけば「事業者不在」でも税務調査を終わらせることができる場合があります。
顧問税理士と契約していた場合、事業者ではなく「税理士が全て対応してくれる」というサービスもあります。
今後、税務調査を簡単に終わらせていきたいと思うのであれば、税理士との顧問契約を考えてみてください。