【税務署の反面調査】得意先に行くのを防ぐ方法は?注意点も解説
税理士を活用しない事業者は、税務調査の対象になりやすいです。
その税務調査をなんとか乗り切ったと思っても、はっきりしない受け答えに対し「そんな対応だと反面調査が必要になることもあるから気をつけるように」と告げられた事業者は意外と多いと聞きます。
この記事をご覧の方は、以下のようなお悩みをお持ちではありませんか?
- 「反面調査という言葉は聞いた事あるが、なんだかいまいちよく分からない」
- 「反面調査を事前に知ることはできるのか?」
結論から言いますと、税務調査を乗り切ったからといって安心とは限りません。
調査の中で疑念が残った場合、反面調査によって取引先や金融機関にまで調査の手が伸びてしまいます。
本記事では、以下の内容を解説していきます。
- 反面調査とは何か
- 反面調査では何をどこまで調べられるのか
- 反面調査を防ぐ方法はあるのか
なぜ反面調査が必要になるのか知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
税務署の反面調査とは?
税務申告が正しいか確認するために「税務調査」が行われます。
これは本人に対して行われる調査ですので、調査に必要となる提示資料は、事業者自身が把握できる状況で進むのが一般的です。
対して「反面調査」とは、事業者ではなく「取引先や金融機関」を対象とした調査を指します。
この調査が必要となるケースは「税務調査官が調査において相手先との取引の確認が必要だと感じた場合」に行われます。
- 事業内容とは明らかに違う不審な領収書があった
- 勤務の実態が確認できない従業員の人件費が計上されている
- 銀行を通した不審な資金の流れが見つかった
このような「一見して不信感が湧くような取引を確認した」場合、その正確性を確認するため、取引先や金融機関の帳簿や履歴を確認し、申告内容の正誤を確認するのです。
そして、税務調査官は国税通則法に記載されている「質問検査権」によって反面調査を行う権利を持っています。
第七十四条の二 国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、消費税に関する調査(第百三十一条第一項(質問、検査又は領置等)に規定する犯則事件の調査を除く。以下この章において同じ。)を行う場合に限る。)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(税関の当該職員が行う調査にあつては、課税貨物(消費税法第二条第一項第十一号(定義)に規定する課税貨物をいう。第四号イにおいて同じ。)若しくは輸出物品(同法第八条第一項(輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税)に規定する物品をいう。第四号イにおいて同じ。)又はこれらの帳簿書類その他の物件とする。)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。 |
(引用:国税庁 国税通則法の第七十四条の二)
一般の事業者に対しては、上表に提示した「第七四条の二」を適用することで税務調査と取引先への反面調査が行われます。
①反面調査が入る理由
基本的に反面調査は、税務調査で疑念が残った場合に「より確かな申告内容の根拠」を求めるために行なわれます。
税務調査官が疑念を抱く代表例を考えてみましょう。
まず、税務調査を受けた場合に「正当性が疑わしい書類や領収書が出てきた」場合です。
- 申告者の書類と、書類にかかれている取引先の帳簿が合っているか
- 領収書は間違いのないものなのか
これらを確認したい場合に、反面調査が入る可能性があります。
次に取引先が「無申告」だった場合です。
調査の対象者が、事業をしていない会社の領収証をもらって架空の経費を計上しているのか、相手先が事業を行っているにもかかわらず、申告していないかを確認する必要があるために反面調査が実施されます。
また、調査で計上していない売上げが発覚した場合、それが全部でいくらあるのかを確認するために反面調査が実施されます。
つまり、反面調査とは、本人の帳簿や資料から疑念を払拭できないから取引先の帳簿や資料と照らし合わせてを行い、取引内容を確認するための調査なのです。
また、申告内容に明らかな不正が発覚していて、その証拠固めのために反面調査を先に開始する場合もあります。
②反面調査で調べられる範囲
反面調査で調べられる範囲は、基本的に各調査によってバラバラです。
例えば、正当性が疑わしい領収書があった場合、領収書を発行したお店や会社へ赴き、間違いなく取引があったのかなどを調査するだけの場合もあります。
また、税務調査と同じように、全ての取引を確認することもあるため、調査範囲は「その時に必要と思われる範囲の全て」になります。
反面調査にあたっての注意点
反面調査が来た場合、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。
ここでは反面調査が来た場合にあたっての注意点を2つ解説します。
①反面調査は突然行われる
税務調査とは異なり、反面調査はある日突然、税務調査官が訪れます。
「突然なんて違法なんじゃないの?」と思うかもしれませんが、国税通則法により定められている税務調査官の持つ権利のひとつなのです。
調査に入られた取引先や金融機関からすれば、対象の事業者との今後の取引を見合わせるきっかけになる場合も十分に考えられます。
②正当な理由なしでは拒否できない
基本的に「反面調査の拒否は不可能」です。
なぜなら、対象となる事業者の不正を暴くための調査という特性から、調査対象の事業者と予め連絡を取り合って通謀されることを防ぐことを重視しなければならないからです。
調査が入った取引先も、個人情報だからといって、守秘義務を行使することは許されません。個人情報でも開示要請が法律に基づく場合は、本人の同意なしで情報を開示することになります。もし、正当な理由なく拒否した場合、国税通則法の規定により「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の罰則対象となってしまうのです。
突然の反面調査にどうしても都合が付かない場合は、日程の変更は可能ですが、特に問題のない取引だったとしても、「不正取引に協力しているのではないか」との疑念を抱かれないよう、可能な限り協力することをおすすめします。
取引先への反面調査を防ぐ方法はある?
反面調査は調査対象の本人に予め了解を取ることなく突然実施されます。
そのため、反面調査が決定したことでさえ、事業者側では把握できないのです。
反面調査が入らないようにできることは不信感を持たれないようにすることが重要ですので、「正しい税務申告を行う」、「調査において取引の確認できる帳簿や資料を提示する」、「質問調査に丁寧に対応する」ことと理解しましょう。
取引先に反面調査が入るということは、あなたと取引先との間に疑い、もしくは確認事項があるということです。または、あなたの事業に対する税務調査だけでは、解決できなかった事案があると考えられます。
もし、取引先に反面調査が入らないようにしたいというなら、早めに税理士に依頼することをおすすめします。
一度税務署に疑いがかけられてしまうと、反面調査を防ぐ方法はまずありません。まずは「疑いをかけられない透明性のある税務」を心がけるのが一番の近道になるでしょう。
今後の反面調査を防ぐために出来ること
反面調査は、税務調査だけでは解決できない疑いがあった場合に、取引先や金融機関にある情報から事業者の税務申告の正当性を確認するための調査です。
つまり、反面調査は「経理や税務を透明化する」ことで防げるものなのです。
- 適切な税務処理
- 円滑なコミュニケーション
- 税理士に相談
これらが滞りなく行われていれば、税務調査も反面調査も恐れる必要はありません。仮に税務調査が来たとしても、調査中に確認しやすい税務処理ができていれば、反面調査が必要になる状況は生まれないはずです。
もし税務調査中に、反面調査の必要性を仄めかすような注意があったなら、その時点からでも税理士に依頼することを考えましょう。税理士に税務調査対応を一任できれば、税務調査はスムーズに進行していきます。
また、予め、税理士と顧問契約を結んでおけば、仮に税務調査の対象になったとしても、事業者が安心できる帳簿が作成されます。
自己判断で帳簿管理するのではなく、税理士に相談することで間違いのない税務処理が行えるようになるはずです。
まとめ
反面調査は、正しい税務申告ができていれば心配しないで良いものです。しかし、不適切な申告内容が多い事業者は、取引先や金融機関にある情報まで調査の対象とされてしまうため、調査後の信頼関係にヒビが入る可能性もあるでしょう。
そんな事態を防ぐためには、ぜひ税理士を味方につけてください。
日頃から正しい帳簿作成を心がけていれば、反面調査を心配する必要はなくなります。税務調査に選ばれても、専門家が管理しているという安心感も手に入るのです。
事業運営のちょっとした悩みも、税務処理の煩わしさも、税理士にお任せください。